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大学教員として生きる道

著者は私大の准教授です。大学教員になるまでの経緯、日常の出来事などを記録します。

大学教員の給与について

大学教授は人気職業の一つであるようで,その理由の一つに社会的地位や給与水準が安定していることもあるのだろう.

朝日新聞社出版の大学ランキングに各大学の教授,准教授,助教の実際の給与が掲示されているので,ある意味まる裸状態といえる.

 

私の場合,だいたいですが年収ベースで

会社員時代(500~650万円)

修士・博士時代(200~400万円)

助教時代(600~750万円)

准教授 (800万円~     )

のキャリアで,国立・私立を含め大学は5か所経験したので,職階だけではなく大学間の差や私立と国立の研究環境,給与水準の違いなどを肌で感じてきた.教授になれば,もう少し給与水準が上がるのだろうが,教授になるまでが大変.最近は准教授,教授でも任期制の大学も多くキャリアの途中で職を失うリスクも高い.

 

確かに教授の給与水準は一般企業に比べて高い方かもしれない.だがしかし,よく考えてもらいたい.新卒で大学教員になる人はいないので,博士修了を最短で終えたあと就職したとしても27~28歳は過ぎるであろう.修士修了後に就職できる場合もあるだろうが,次の職にありつけなかったり,就職できたとしても昇進が遅れるだろう.修士・博士課程の学生時代は授業料を大学に収める必要があるので借金も抱えることになるかもしれない.これらの理由から大学教授になろうと思う人は給与水準を職業選択の優先順位に置かない方が賢明だ.

 

私が大学教員になる上で最も向いていると思うタイプは,

1)まず学問・研究が好きであること,

2)教えることに生きがいを感じることができること,

3)自分のことより他人のことを優先順位を高くして考えられること,

である.そしてあまり見返りを求めないことも大切だと思う.つまり,やってもやらなくても,それほど待遇がよくなったり評価されたりすることは少ない仕事が多い.なので仕事をすること自体にやりがいを感じることができる人が大学教員に向いていると思う.だが,人って不思議でそのようにやっても評価されない仕事を積み重ねていると自然と周りから評価されるような人物になっていると感じる.なかなか難しいのだが,業績カウントはリクアイアメントで業績だけでは,大学教員の仕事は評価しにくく,給与に反映させることは難しいと感じる今日この頃である.

 

 

大学教員の夏休み

大学の先生って,夏休みが長くっていいね,って思われているかもしれない.実際,学生の授業がない間はマストの仕事がそれほどない教員もいるかもしれないが,多くの先生方は沢山の仕事を抱えていると思う.

 

大学のルーティン業務としては会議,オープンキャンパス,学外実習,ゼミ合宿,入試関係などがある.実際これらの予定だけでもこの夏2週間ほどの実働日がある.その他に学会発表の準備,論文執筆,論文査読,研究打ち合わせ,研究データのまとめ,予算申請書類の作成など授業がないこの時期にしかできない仕事も沢山ある.なので大学教員にとって,一番大切なことは自己管理能力だろう.

 

中には軽井沢の別荘で論文執筆に励むなんて先生もいるようですが,うらやましい限りですね.私は,自宅でエアコン付けて仕事して,コーヒー飲んで,ブログ書いて仕事して,ってな感じでお盆休みを過ごして,秋の学会発表,論文執筆に向けて準備中.人がやっていないときに頑張らないとね!

教員公募について考える

大学教員になるまでの道のりは,人それぞれなので一概には言えないだろうがこれからの時代,教員公募は多くの人が通る関門ではないだろうか.

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大学教員になりたくて博士課程に進学し,学位を取得していざ就職となるとスムーズに決まる人の方が少ないのではないでしょうか? または,博士課程に進まずに企業から大学教員になる道を選んだ場合も強力なコネがないと公募では決まりにくいと思う。

 

斯く言う私も公募戦線では大変苦労し約100通弱の履歴書をサブミットした経験がある. 平成29年度の国内大学数は国公私立合わせて764大学なので,およそ8分の1ぐらいはサブミットしたことになる.その中で得たことは今後の大学教員を目指す若手研究者に少しは役立つだろうと思うことに加え,公募で教員を採用する立場にあたる研究・教育機関にも役立つ情報を提供出来ればと思う.

 

私が教員公募にアプライしていた時期は,任期付助教時代で上手く行けば准教授での採用を目指し,次に任期なし助教,最低でも職を繋ぐという意味で任期付助教への採用を条件とし国内を中心に職を探した.英語圏の大学へは語学力等の能力不足と家族がいたことから選択肢として対象外であった.

 

私は任期3年更新なしの助教時代の2年目から公募にアプライを始めたのだが,2年目は書類選考を通過して面接まで行くことはなく,3年目には焦りもありつつ,週6〜7コマの授業と研究,そして公募書類作成を毎日繰り返し朝8:00〜夜24:00まで大学で過ごしていた.

 最終的には4つの大学から面接に呼ばれ,更新可の任期付き助教に無事就職できた.

まず第一関門の書類選考を通過するためには,研究業績,教育暦の両方が必要で専門分野が少しでもズレていると見込みはないと感じてきた.研究業績については沢山あるほど良いかというと,そうとも限らない.つまり,採用する側から見ると,あまりにも優れた研究業績があると採用後に扱いにくさを感じるからかもしれない.または,研究ばかりして教育や学内の仕事にどのぐらい力を入れてくれるのか不安になることもあるかもしれない.とはいえ,全く業績がないのも考えもので筆頭論文が10本前後と学位は必要条件ではないかと思う.もちろん,社会人経験が豊富であること,格別な能力・技能を持つ,あるいは研究活動を中心業務に出来る旧帝大大学院大学等は話は別だろうと思う.

第二関門の面接だが,多くの大学では面接に2〜3人は候補者を残している.実際に合って話して,人となりを確認したいこともあるだろうし,第1候補者が別の大学に採用される可能性もあるので補欠としても確保したいこともあるだろう.また,大学によっては模擬講義を要求されることもある.模擬講義を要求する時点で,即戦力を望んでいることが垣間見ることができる.私がこれまでの面接で驚いたことはある地方国立大学の最終面接で,業績書に記載したある雑誌名の漢字表記について厳しい指摘を受けたことがある.漢字を正しく書くことが大事なのは分かるが,完全に間違いではなく旧漢字を使用していたことについてかなり厳しく突っ込まれた.その時には直感でこの大学は採用してくれないと感じたが,案の定,別の方が採用された.もしかすると出来レースであったかもしれない.

 

公募戦線を戦う若手教員へのアドバイスとしては,書類を出さないと箸にも棒にもかからないので,まずチャレンジをして欲しいと思う.それと,学会や論文で名前を売ることは最低限の活動として行っておくべきであろうと思うが,あまり政治的になり過ぎない程度にきっちりと仕事をすることが大事だと思う.大学によっては,それぞれの講座が欲しい人材がいても公募をすることが学内の規定にあるので,公募をすることもあるようだ.だが,それで実際に公募によってより優秀な人材が応募してこれば,中には反対する教員が出てくるかもしれないし,可能性がゼロとは限らない.

 

公募を行う側の大学への要望であるが,最低,書類選考によって不採用の連絡はすべきだと思う.通常の大学は締め切りから2~3か月で連絡が来るが,半年経っても1年以上経っても何の連絡もない大学があった.履歴書,業績書を各大学の様式に従って作成し抜き刷りを用意するのも一苦労なので,大学側もその苦労をくみ取って欲しい.中には講座の代表教授から丁寧な断りの手紙付きで,提出した業績の原本を返送していただき不採択の連絡をいただいたケースもある.私が採用する側の立場になった際には見習いたい行為である.

 

これだけJREC‐INで公募が行われていても中には”出来レース”もあるであろう.しかし,例え出来レースでもレースに出場することで得るものはあるはずである.もちろん初めから,知り合いを通じて”出来レース”と分かっていれば話は別だが.公募が開始して締め切りまでが2週間なんていうのは怪しいですね.先ほども書きましたが,ただこの出来レースも内部の教員が好んで行っている訳ではないケースが多いと思うので,そのあたりの事情は応募する側も理解しておかないといけないですね.

いざ大学教員になってみるとコネで入職した人がこんなに多いのかと驚くこともある.コネが良いか悪いかについては,何とも言えないがコネによる入職者が多いとよく言うとアットホームというか,競争が少なくなるというか,悪事を働きにくくなるとかもあると思う.悪く言うと競争が起きにくいので成果(アウトプット)が停滞するなどの弊害もあると思う.コネを作るのも研究者の仕事の一つと捉えることもできるが,ちょっと変わり者でもコネがあまり無くても誰も思いつかない,世の中を変える様な人材や研究成果を挙げられる人物も大学には必要だとも思う.

 

最後に重要なことは,今の職場や研究所,大学における人間関係やパフォーマンスが次につながるということである.業界は意外と狭いので,知り合いの知り合いを含めると国内の大学では多くの方が何らかのつながりがあると考えて間違いないであろう.したがって一番,近くで研究を行っている指導教員,上長,同僚と良い関係でいることが,公募戦線を戦う上で結果的には一番,重要だと感じる.

 

   

自身の強みを知る

自身の強みを知ることは,弱みを克服する以上に大切かもしれない.

 

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自分の強みって,言われて何となく得意なことを想像してみると,”集中力がある” とか ”好奇心が旺盛” などと思っていた.

 

そこで,「さあ,才能(じぶん)に目覚めようーあなたの5つの強みを見出し活かす」という書籍に触れてみた.この本の凄いところは,書籍に付随されてるアクセスコードを専用Webサイト、ストレングス・ファインダーに入力して30分ほどかけて177つの質問に回答すると自分の強みが診断できるというもの.

 

表示された診断結果は、

自分だけの特徴的な資質

・目標志向

・達成欲

・学習欲

・未来志向

・戦略性

とあった.確かに当たっていると思う部分もあるけど,自分で思っていた強みとはちょっと異なると思った.研究者としてやっていく上では,34個の資質のなかで ”分析思考” や ”着想” などがあった方が適性があるのだろうけど,ちょっと残念.

 

ジョハリの窓(サンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセル・ルフトとハリー・インガム,1955年発表)でいうところの,”盲点の窓” (他人にわかっていて自分でわかっていない)領域の能力なのかもしれない.いや,自分で回答した結果なので”秘密の窓”(自分ではわかっていて他人にはわかっていない)領域なのかもしれない.

 

いずれにしても,この私だけの資質を活かしていくことを意識して仕事に取り組もうと思う.

 

 

 

 

 

 

何故,大学教員になったのか?

何故,大学教員になったのか? 改めて自身を振り返るために考えてみた.

 

中学,高校時代はあまり勉強は得意ではなく,むしろ運動部に所属してどちらかというと体育会系の活動が中心.しかし,夏休みの自由研究や工作などはどっぷりとはまるタイプ.

 

何か決められたことを暗記したり,解法のテクニックを覚えることには何故か興味が沸かない.中学・高校時代の勉強はライバルとの争いというか,自身のさぼりたい気持ちに打ち勝つというか,そのようなものであったと記憶している.

 

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大学に入ると好きな分野の勉強ができると思っていた.しかし,授業は平凡,自分で本を読んでいる方が面白いと感じていた.卒業研究では,日頃から疑問に思っていたことに取組み勉強することの面白さにはじめて気付いた.そこがスタートで大学院に進学し研究者になろうと思った.

 

でも,振り返ってみると中学,高校時代にもう少し勉強しておけば良かったと思うこともある.基礎がもっとしっかりとしていれば,今の研究活動にもっと深みや幅がでてくるのではと思うからである.一方では,中学,高校でもっと勉強にどっぷりと浸かっていれば,逆に自分の興味がある分野に偏った独学ができていなかったのではという思いもある.人間ないものねだりで,自分に欠ける能力を羨んだり,後悔したりするものだと思う.

 

ただ,この年齢になって思うことは,自分にない能力を向上させようとしても圧倒的に時間が足りないため,そこに労力を費やすよりも,自分の得意な能力を知り生かした方が効率がよく上手くいくのではと感じる.

 

そこで自分の強みを知るために,ストレングスファインダーという書籍を手に取り試してみた.その内容は次回に紹介する.

 

 

教育・研究者としての心得

ブログの著者は,都内某中堅私大に勤務する40歳代准教授です.

 

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自身への備忘録として,初心を忘れないために教育・研究者の心得をまとめます.

 

1.質の高い教育を行うためには,研究を推進し新しい情報を知ることが前提.

 

2.時間がないから研究ができないは言い訳にならない.

  時間がないと思われる人の方が高い成果を挙げている.

 

3.研究費(外部資金)を獲得するためには,毎年数本の原著論文

 (最低年に1本)を書くことが前提.

 

4.研究のモチベーションを高めたり,維持するためには現場を知ること.

  悩んだり,迷ったらまず現場へ戻る.

 

5.大学の健全な運営のために尽くす.

  少子化時代の大学経営は厳しい状況であること,その中で好きな研究が

  できていることに感謝する.

 

6.予算以上の成果を挙げるために尽力する.

  研究費は国民の身銭であることを理解し,適切な使い方をする.

 

7.次の世代につながる手本になれるように努力する.

  自身が恩師にお世話になってきたように.

 

その他,諸々あると思いますがまずはこのあたりで.