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大学教員として生きる道

著者は40歳代の都内中堅私大の准教授です。大学教員になるまでの経緯、日常の出来事などを記録します。

大学経営からみた非常勤講師が増えることの問題点

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大学教員の半数は非常勤,常勤の4分の1が期限付きであることがニュースになっていた.確かに衝撃的でこのような記事がアップされると大学教員を目指す人が益々減ってしまうのではないかと危惧される.

この記事で気になったのは非常勤の人数の数え方が述べ人数であるらしいので,実際には半数には満たないと思われる.非常勤のみで生計を立てている場合は,おそらく3大学以上に勤務している可能性も高く,非常勤の中には本務校がある教員も含まれている可能性も高い.今回の調査は朝日新聞社河合塾が行ったようだが,このような実態調査は本来,文部科学省の高等教育局がもう少し正確で詳細なデータを出すべきであろう.

  

そのことを前提としても,過去の推移でみても非常勤の割合が増えて,常勤も任期制教員が増えていることの事実には間違いがなさそうだ.この記事から読み取らなければならないのは,常勤の教員数と非常勤の割合のみならず,全体の教員が増加し続けていることにも問題がありそうだ.その背景には大学全入時代の到来や,大学数自体が増えてきていることが挙げられるだろう.時代の背景の変化とともに大学が果たす役割も日々変化し続けているように思う.もちろん旧帝大などに代表されるような研究重視の大学もあれば,地方私大のように職業能力を高めることに比重が置かれる大学もあるが,いずれの大学においても,大学で身に着けるべき能力は日々変化しているのではないだろうか.

 

私自身は大学教員として教育に携わる上でのポリシーとして,研究と教育の関係性について,教員は当該分野の最新の研究に最大限携わることで,高等教育機関に相応しい教育ができると考えている.しかしながら,一方では大学全入時代の昨今,当該分野の研究にさほどコミットしていなくてもやるべき役割があると考えることも実感している.

海外ではレクチャラーとリサーチャーを完全に分けて専任教員として雇用しているケースもあると聞く.レクチャラーは週十数コマ担当し授業のみを行うことを業務とし,リサーチャーは外部資金獲得,研究および大学院を担当業務とする考え方だ.

限りのある財源を効率よく使うには,このような役割分担を明確にした運営もあるのかもしれない.今回は非常勤と専任の割合についてのテーマなので,レクチャラーとリサーチャーの役割分担とは異なるのだが,以下に大学経営面から考えて非常勤講師の割合が増えることのメリットとデメリットを箇条書きにした.

 

大学経営的観点からみた非常勤講師の割合が増えることの短期的メリットと長期的な問題点

短期的メリット

1.非常勤講師を増やすことにより専任教員の授業負担を減らせる.

2.専任教員よりも安い人件費で済む

3.学生数が増加したり確保できないときにコマ数を調整しやすい.

  (全く望ましいとは思わないですが...あくまでも経営的な視点で)

4.特定の分野に特化した専門的な授業を開講できる.

 

長期的問題点

1.専任が減り非常勤が増えると大学全体で研究業績が落ちる.

  →大学が生産すべき価値創造の根幹にかかわる問題

2.研究を行いにくい環境の非常勤講師が増えると教育の質が低下する.

3.5年の雇い止めの問題の勃発.

4.非常勤講師の確保とコマの割り当て等のマネジメント業務の増加.